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大阪高等裁判所 昭和34年(ラ)231号 決定

神港信用金庫兵庫支店

事実

抗告人は原審以来、栗本満佐夫名義は株式会社栗本サルベージの手形取引上の別名として一般に通用していたから、抗告人は本件手形債務を負担しないと主張した。

原審は、「債務者は右手形は右申立外会社が債務者の名を仮称して振出したものであると主張するが、右債権者が右手形を債務者が振出したものと信じていたことは証人野田忠勝の証言により明らかであるから債務者も亦右手形債務の責を免れないものというべきである。」と説いて抗告人破産宣告の決定をした。

理由

証拠によれば、抗告人栗本満佐夫は、同人が代表取締役をしている株式会社栗本サルベージの株式会社矢吹欣造商店に対するクレーン賃借料支払のため、左記約束手形一通を振出し、株式会社矢吹欣造商店が現に本件手形の所持人である事実を認めることができる。

金額 四一〇、〇〇〇円

支払期日 昭和三三年五月五日

支払地 神戸市

支払場所 神港信用金庫兵庫支店

振出地 神戸市

振出日 昭和三三年二月一〇日

振出人 栗本満佐夫

受取人 株式会社矢吹欣造商店

抗告人は、「本件手形は、株式会社栗本サルベージがその手形取引上の別名である栗本満佐夫名義を以て振出したものである。」と主張する。

しかし自然人の氏名である栗本満佐夫名義が、株式会社栗本サルベージの手形取引上の別名として一般に通用するということは事実上あり得ないことであつて、本件全証拠によつてもこのような事実を認めることはできない。更に本件手形授受の当事者間に、株式会社栗本サルベージにおいて本件手形金支払の債務を負担し、抗告人栗本満佐夫は本件手形債務を負担しない特約成立の事実を認めるに足る証拠もない。

従つて抗告人は株式会社矢吹欣造商店に対し振出人として本件手形債務を負担するものである。

上記の外、本件破産宣告の申立を相当と認める理由は原決定理由記載と同一であるから、ここにこれを引用する。

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